2002年4月25日

内閣総理大臣 小泉純一郎 殿
衆議院議長  綿貫民輔 殿
参議院議長  倉田寛之 殿

声明

自由人権協会京都
代表理事 川合 仁
同  塚本 誠一
同  中西 清一

(事務局)京都市中京区御池通烏丸東入ル
京ビル7階 烏丸法律事務所内
Tel 075-223-2714 Fax 075-223-2718

 3月15日、政府は、「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」(以下「政府案」という)を閣議決定し、同月18日、国会に上程しました。

 この政府案は、裁判官1人と精神科医1人で構成される合議体において、重大な犯罪にあたる行為をしたが心神喪失・心神耗弱により不起訴処分または無罪とされた者等に対して、「再犯のおそれ」を要件とする新たな強制入通院制度を創設するものです。

 しかし、精神障害者の犯罪率・再犯率はそれ以外の者に比べて低いとされており、特別に再犯予防の対象とすべき根拠はありません。また、これまでのいかなる研究によっても、再犯予測は不可能であるとされています。さらに、付添人弁護士をつけることはできるものの、反対尋問権等の当事者としての権利が保障されておらず、適正手続の保障を欠いていると言わざるを得ません。しかも、入院期間には上限がなく、無期限の予防拘禁がなされるおそれが高いのです。

 このような政府案は、精神科医療に治安の観点を持ち込み、治療における信頼関係を歪め、精神障害者を医療から却って遠ざけるおそれがあります。今、必要なのは、差別や偏見を解消して、誰もが自ら進んで精神科医療を受けられる社会を実現し、精神障害者が地域で暮らせるよう精神障害者福祉を充実することです。

 私たちは、政府案に反対します。

以 上