◆精神病院への強制入院 20年以上が1万7000人

制度運用に極端な地域差

 2001/07/17: 大阪読売夕刊1面

 精神保健福祉法による強制入院の期間が二十年以上という「一生閉じこめ」に近い患者が、措置入院と医療保護入院で計一万七千人(一九九九年)にのぼるうえ、制度運用に極端な地域差があることがわかった。

 とくに措置入院は都道府県別にみた人口比の患者数に十四倍の開きがあり、二十年以上の患者の比率も京都、千葉がゼロなのに山口は69%。診断基準の適用範囲が医師や行政の姿勢に大きく左右されていることを示しており、専門家は「早急な実態解明、是正が必要だ」と指摘している。

 厚生労働省の九九年六月末時点の調査によると、措置入院(行政による強制入院)の患者は全国で三千四百七十二人。うち措置期間が二十年以上の患者は千八十二人(31%)にのぼる。

 都道府県別に人口十万人あたりの措置患者数をみると、佐賀九・四人、鹿児島、大分九・一人に対し、大阪〇・七人、奈良、香川〇・八人と大差がある。

 二十年以上の比率が高いのは山口69%、和歌山63%、岐阜61%の順。一方、京都と千葉はゼロ。東京、沖縄なども一人しかいない。

 逆に三か月以内の比率は東京62%、島根58%、神奈川55%、京都54%、大阪49%の順で、佐賀は2%、大分は5%にすぎない。

 一方、医療保護入院(家族同意による強制入院)は約九万千七百人で、うち一万六千六百二十人(18%)が二十年以上。人口十万人比では熊本百六十八人に対し、福井三十九人。二十年以上の比率は和歌山34%に対し島根8%と、いずれも四倍の地域差がある。措置入院は「自分を傷つけるか、他人に危害を加える恐れ」、医療保護入院は「入院が必要だが、本人に判断能力がない」という精神保健指定医の診断が要件。病院は定期的に病状を行政へ報告、精神医療審査会が強制入院継続の必要性をチェックする。

 浅井邦彦・日本精神神経学会理事の話「措置入院は該当する症状がなくなれば、医療保護や任意入院に切り替えられるので、社会復帰対策の状況は格差と関係ない。家庭事情からわざと公費負担の入院にした『経済措置』も九五年の制度変更で消えたはずで、診断の考え方が違うとしか思えない。治療を続けても措置症状が消えない患者は通常ごく一部で、二十年以上が多数を占めるのは異常だ」

◇措置入院患者数の地域差=図

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