◆入院女性“不審死”届けず 山口の県立精神病院

 根拠なく死因「窒息」と診断

 01/12/31: 大阪読売朝刊2社面

 山口県宇部市の県立精神病院「静和荘」で昨年五月、入院中の女性(当時二十七歳)が個室内で急死し、主治医の副院長が明確な根拠がないのに死因を「窒息」としたうえ、医師法に基づく警察への届け出を怠っていたことがわかった。副院長は「死因の診断に自信はなく、(解剖は)しのびなかった。今考えれば届けるべきで、反省している」などと言っている。

 病院の説明によると、女性は一九九九年十月、家族の同意で強制入院。最初の一か月余りは保護室に隔離され、その後は同じ閉鎖病棟内の個室にいた。

 亡くなった日は午後四時半すぎ、心肺停止状態でベッドにうつぶせに倒れているのを看護婦が発見。蘇生(そせい)を試みたが回復せず、五時二十分に死亡と判断した。

 女性の両親は五時前に駆けつけたが入室を拒まれ、会えたのは死後処置を終えた後の七時すぎだった。副院長は死亡診断書に直接死因を「窒息」と記載。その原因は「精神分裂病による昏迷(こんめい)状態」で「水のような吐物を吸引」とした。死因の分類欄は「不慮の外因死」にマルをつけた。

 読売新聞の取材に副院長は、窒息の根拠を「(皮膚が青くなる)チアノーゼがみられた」、吐物吸引の根拠は「人工呼吸の時、肺でゴボゴボと音がしたから」と説明したが、口内にも吐いた跡はなかったという。

 医師法は、異状死体を診た医師に二十四時間以内の届け出を義務づけ、怠ると罰金刑の対象。厚生労働省は「外因死やその疑いがあれば届け出対象。死因が不明確なら幅広く考えるべきだ」としている。

 日本法医学会理事長の塩野寛・旭川医大教授の話「当然届けるべき異状死だ。若い人が水を飲んで死ぬとは思えないし、溺死(できし)でも肺で音はしない。死因は不可解と言うほかない」

◆女性不審死、山口の精神病院 両親の面会を半年間拒否

 死亡後カルテも開示せず

 02/01/13: 大阪読売朝刊2社面

 山口県立精神病院「静和荘」(宇部市)で一昨年五月、入院中の女性(当時二十七歳)が不審死した問題で、女性の両親が入院から半年間も面会を拒否されていたことがわかった。家族の同意に基づく強制入院(医療保護入院)だったが、病院側は死亡後のカルテ開示も「県の方針で遺族は対象外」と拒否していた。

 女性は九九年十月に入院。最初の一か月は保護室に隔離され、「動物じゃないからオリに閉じこめないで」と連日訴えていた。

 両親は週一―三回、病院を訪ねて面会を希望。しかし主治医の副院長は、女性が病室に移った後も「もう少し様子を見てから」と渋り続けた。

 翌年四月の初面会で女性は両親に抱きつき、手を離さなかったが、一か月後に急死した。カルテは閲覧に限って一日だけ応じた。

 父親は「治療を受けさせる責任を家族に負わせながら納得できない」と閉鎖性を批判。副院長は「他の患者と接した時の病状が不安で隔離が長引いた。面会は強く禁止する気はなかったが、ずるずる遅れて反省している」と話している。