◆精神医療にオンブズマン制/権利擁護へ公的支援

 閉鎖病棟も訪問/大阪で来年度から

 02/01/08: 大阪読売夕刊1面

 NPO(非営利組織)と行政機関、専門家、市民の連携で、精神科病院の入院患者の権利を守る「精神医療オンブズマン制度」(仮称)が大阪府で新年度、スタートする。メンバーが病棟を訪ねて患者の声を直接聞き、病院側に改善を求める仕組みで、予告なしの訪問も行う。医療現場へ積極的に出向いて行う公的な権利擁護制度は全国で初めて。精神科病院の閉鎖性を減らし、人権侵害の根絶と医療の質の向上を図るうえで画期的な取り組みとして注目される。

 入院経験者や一般市民を含め、研修を終えたメンバーを登録。閉鎖病棟まで入り、患者の不満や要望、相談を聞き取る。調査結果は病院に伝え、患者の個人情報を除いて一般にも公開する。条例などは設けず、病院側は任意で協力する。

 NPOの大阪精神医療人権センターが一九九八年から独自に進めている訪問相談活動を、参加団体を広げて公的に位置づける制度。同センターや地元の精神病院協会、精神保健福祉士協会、精神障害者連絡会、家族会、弁護士会、保健所長会などでつくる「精神障害者権利擁護連絡協議会」(事務局・府こころの健康総合センター)でこのほど実施方法の骨格を決めた。

 米国の精神病院に市民団体から派遣された権利擁護者が常駐していることを参考にしたもので、府精神保健福祉課は「精神医療の改善に欠かせない取り組み」として活動費の補助を予算要求している。

 大阪では九七年、安田病院系の大和川病院(廃院処分)での患者虐待や劣悪医療が問題化。行政による立ち入り調査や患者の退院請求、処置改善請求を受ける精神医療審査会だけでは人権侵害を防げなかったことを教訓に、府精神保健福祉審議会は一昨年五月、外部の第三者が患者を支援する仕組みを提言していた。

 人権センターの山本深雪事務局長は「患者の訴えが病院の外へ届くのを待っていては権利は守れない。地域ごとに分担して日常的に病院を訪問できるよう、五年計画で人員を養成したい」と話している。