◆精神医療 「収容」から地域へ転換を。

WHOが日本に勧告 病床数、数も人口比も世界一

 2002・3・9 大阪読売朝刊2面

 世界保健機関(WHO)は八日、日本の精神医療について、病院収容から地域医療への転換を緊急に進めることなど五項目の勧告をまとめ、サラチーノ精神保健・物質依存部長が千葉市で開かれた日本社会精神医学会で明らかにした。すでに厚生労働省幹部に伝えており、追って文書でも政府に届ける。長年の課題である隔離収容中心の精神医療体制の改革が国際的にも迫られたことになる。

 サラチーノ部長は、日本の精神病床(約三十四万床)が人口比でも絶対数でも世界最大であることを指摘し、「人材や資金などの社会資源はあるのに、有効に使われていない」と批判。精神病院のベッドを減らし、退院後の受け皿を準備しながら外来や訪問などの地域医療へシフトするよう求め、「これは緊急の課題だ。十年かかるかも知れないが、すぐ始める必要がある」と強調した。

 さらに▽当事者や家族、非政府組織、市民が患者の権利擁護活動などに参画するようにし、医療をオープンにする▽生物学的な精神医学だけでなく、社会的分野の研究を重視する▽心理専門職の位置づけを明確にする▽アジア諸国の精神保健への協力----を求めた。

 WHOが昨年初めてまとめた世界の精神保健統計では、日本の精神病床は世界全体(百八十五万床)の18%を占め、すでに地域医療へ転換した欧米諸国はもちろん、ロシア(十七万床)や中国(十三万床)よりも多い。