2月27日の衆議院法務委員会、3月1日の予算委員会第3分科会の「心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律案」に関連する質疑


○ 2月27日 衆議院法務委員会
    自民党 佐藤公明党 漆原民主党 平岡

○ 3月1日 予算委員会第3分科会
    自民党 田中


154-衆-法務委員会-2号 2002年02月27日 (抜粋)

○佐藤(剛)委員 長官、今おっしゃられたことを速やかに、そしていかなる場合が発生しても懸念のないように、懸念を払拭するような形で進めていただきたいとお願いしておきます。また、この問題についてはいつしか触れますから、よろしくお願いします。

 次は、いわゆる触法精神障害者の問題。

 昨年六月の大阪教育大学附属池田小学校で痛ましい事件が起きたわけでございます。重大な犯罪に当たる行為をした精神障害者の処遇の決定方法あるいは入院治療のあり方、さらには、退院後の継続的な治療を確保する方法、こういうようなことについて非常に国民の高まりがあった。今までの制度、このままで大丈夫なのかどうか。それからまた、一面、この機会に、その精神障害者に対する福祉のレベルアップ、これは私は非常に重要だと思っておりますし、常にこの問題というのは誤解と偏見を持ちますから、そこら辺、気をつけて言葉を使いながら進めていかなければならないと思っておりますが、幸いにも非常にいいコンビで、法務省、それから裁判所、それから厚生省、この協力のもとでプロジェクトチームがあれして、与党内で私は座長をやらせていただきましたが、刑事局長初め皆さんの御努力でいい形で進んでいると思います。

 それで、ここで一括しまして御質問申し上げますので御報告をいただきたい。

 一つは、この新たな制度というものの目的、目的を持った制度としてどういう形で考えるのか。それから、この新たな制度において、裁判官とお医者さんとが共同して、重大な触法行為、殺人、傷害、強姦、放火、傷害致死等々大体六つぐらいのものを考えているわけでありますが、そういう行為をした精神障害者の処遇を判断する仕組みを整備するとされているわけでありますが、この判断の仕組みを取り入れる趣旨、これについての御質問。

 それからもう一つは、重要なことは、これからのアフターケアの問題であります。アフターケアについて、保護観察所に新たに精神保護観察官を設置するという形で私ども聞いておりますが、この病院とか地域社会の保健所等々と、コーディネーターといいますか、連携しまして、本件の観察・指導をしていくということが非常に重要ではないかと思うわけであります。

 それで、現在、新聞に、こういう保護観察所に精神保健観察官というのを置きますよというふうなことが載りましたら、地域でもそうですが、全国ベースで動いているのじゃないかなと思いますが、非常にまじめな方々が保護司になっておられるわけでありますが、その保護司の方々が、自分たちのように、経験のある方はいいですけれども、経験のない方々にとっては非常に不安である、これはしっかりした形でやっていただけるのでしょうねということを、私自身もしわ寄せがないようにと受けているわけであります。そこら辺の問題を、保護司に対しまして、この委員会の場で、御不安はございませんよということを、大臣からのお言葉、また関係局長からのお言葉、そういうふうなものを発していただきたい。

 以上でございます。

○森山国務大臣 いわゆる触法精神障害者に係る新たな処遇制度は、心神喪失等の状況で重大な犯罪に当たる行為を行った者については、まずもって治療の確保を図るということが大切でありまして、継続的に適切な治療が行われることによりましてその病状が改善されるように、そして、それに伴って、これらの者がその精神障害のために同じようなことをもう一度また繰り返すというようなことがないようにするということが、本人のためでもあり社会全体のためでもあるというふうに思うわけでございます。

 このため、裁判官と医師が共同して入院治療の要否、退院の可否などを判断する仕組みを考えまして、また退院後の継続的な治療を確保するための仕組みもあわせて整備するということが必要であると考えておりまして、法務省といたしましては、厚生労働省とともに、今国会においてそのような仕組みを整備するための必要な法律案を提出したいというふうに考えております。

 佐藤先生にもいろいろと御心配をおかけし、御苦労いただいておりまして、大変ありがたく思っておりますが、できるだけ早くそのような案をしっかりと決めまして提案をしたいというふうに考えておりますが、終わりにおっしゃいました、退院後のアフターケアの関係で保護司の方に過大な負担がかかるのではないかという御心配のことでございますが、この制度におきましては、退院後も継続して必要な医療を確保するということがまず重要でございます。ですから、退院後のアフターケアを実効あるものとするためには、その人の生活状況を見守って、その相談に応じて通院や服薬を行うように働きかけるという必要がございます。そのためには、精神保健や福祉に関する専門的な知識及び経験を持っている職員がこれに当たることが必要であると考えておりまして、そのような知識、経験を有する専門職員として、精神保健観察官を全国の保護観察所に配置するということを考えております。

 現在の行財政改革のもとで定員を取り巻く情勢は極めて厳しいものがございますけれども、必要な人員の確保について努力をしたい、できる限り努めてまいりたいと思いますので、先生方の御支援もいただきながらぜひその目的を果たしたいと思っております。

 一般の保護司さんにつきましては、今まで申し上げたようなこの制度において必要とされる専門的な知識あるいは経験を有する方というのがほとんどいらっしゃいませんのが実際でございまして、保護司の方々に、この制度における処遇に直接関与していただくということは適当ではないというふうに思っております。

 さらに、現状でも保護司の方々は保護観察という非常に困難な仕事を無報酬で引き受けていただいているわけでございまして、その御労苦は大変大きなものがございますから、今回の制度のもとでさらに御負担をおかけするということは、保護司制度そのものにも影響が出てくるというふうに思われますので好ましくないというふうに思いますので、そういうことはしないようにということを考えておりますので、必要となる職員の確保ということがまずもって先決だというふうに考えております。

 以上でございます。

○佐藤(剛)委員 ただいま森山大臣から明確な御答弁が発信せられまして、全国のまじめな、非常に大変な仕事をされている保護司の方々は御安心なさったんじゃないかなと思っておるわけでありまして、感謝申し上げます。


○漆原委員

 次に、触法精神障害者の処遇に関する法律についてお尋ねをします。

 所信で述べられておりました。裁判官と医師が共同して入院治療の要否や退院の可否を判断する仕組みの整備をするとおっしゃっておられましたが、裁判官や医師のおのおののこの判断についての役割、これは初めての制度でございます、おのおのどんな役割に従って判断していくのか。その役割分担を教えていただきたいと思います。

○古田政府参考人 ただいまお尋ねの問題につきましては、端的に申し上げますと、精神障害が原因、あるいはその重大な影響下で起こった行為ということでございますので、それにどう対応するかということにつきましては、医療的判断が非常に重要なポイントになるわけでございます。

 しかしながら、その一方で、これが、本人の意思に反して入院させる、あるいは通院を義務づける、そういうふうな義務を生じさせる面があるわけでございまして、そういうことになりますと、そこで、いろいろな生活環境等からして入院させる必要があるのか、そこまではいかないのか、そういうふうな点についても慎重な判断というのが必要になるわけでございます。

 そういうある意味では純粋な医療的な面と、一方で、社会の中でどういうふうに処遇していくということが適切なのか、この両方の面があるわけでございまして、そういうことを考慮いたしまして、医療的判断は、やはりこれは医師の判断が非常に重要になる、一方で、そういう生活環境等も踏まえた治療継続の可能性、それから起こってくる同様の問題行動の実際に発生するおそれとか、そういう点についての判断、そういう点については、医療的判断を基礎としながらも、やはり法的な判断というのが必要になってくる。その両者の要素を調和させるために、裁判官と精神科の医者の合議体によって処遇を決定することが最も適切であると考えているということでございます。

○漆原委員 お医者さんの判断と裁判官の判断、二つ、全く分野の違う人が判断するわけなんですが、医療の観点からの判断と、それから法律の観点からの判断、どっちの方が優先するのか。今お伺いしていると、医療判断をもとにして、それを大前提として法律的な判断をしていくんだというふうに私は理解したんですが、そういう理解でよろしいんでしょうか。

○古田政府参考人 結論的にはそういうことになろうかと思いますが、申し上げたかったことは、医療的判断の部分につきましては、これは精神科のお医者さんの考えというのが非常に重要なポイントになる。一方で、先ほど申し上げましたいろいろな生活環境等も踏まえた判断というのは、これは裁判官の考え、法律的な目で見てのそういう考えというのがやはり大きなウエートを占めていくであろう。そういうふうな、実際上の観点の相違といいますか、それで相互に議論することによって適切な結論が得られるということを期待しているということでございます。

○漆原委員 退院後も継続的な治療を確保するための仕組みの整備というふうに大臣は述べておられました。

 保護観察所に精神保健観察官を置くというふうに報道されているわけでございますが、この新しい精神保健観察官、その役割は一体どんな役割なのか、どういう資格なのか、どういう人が有資格者になるのか、人数はどのくらい考えておられるのか、この辺の御説明をいただきたいと思います。

○横田政府参考人 お答え申し上げます。

 まず、保護観察所に置く精神保健観察官の役割でございますけれども、これは、御質問にもございましたように、まず、通院患者に継続的な治療を受けさせるといいますか、医療の確保をすることが最大目的でございます。

 そのためにどういうことをいたしますかといいますと、今考えていますものですと、大きな枠組みの中で申し上げますと三点ほどございます。

 一つは、その対象者に対する観察と指導でございます。対象者がきちんとその医療を続けるかどうか、また、例えば、薬を飲みなさいということで投薬されていればそれをきちんと飲んでいるかどうかといった、間違いなく医療機関の指示に従って適切な医療をみずからも継続しているかどうかということを観察いたしますし、その状況によりましては通院あるいは服薬といったことを勧める、指導するといったような、観察・指導という分野がございます。

 それから第二点でございますけれども、これは、こういう継続的な医療の確保といいますのは、精神保健観察官がひとり観察・指導していればいいというものではございませんで、医療機関でありますとか、あるいは地域の保健婦さんだとか福祉事務所だとか、そういった関係機関が、やはり地域一体となってその対象者を見ていかなければいけないということでございますので、精神保健観察官は、そういった中で一つの中心的な存在として、それらの関係機関あるいは関係の方々との間に立って、ネットワークといいますか、コーディネートしながら医療が確保できるようにしていく、そういう役割を担っていくようにしたいと思っています。

 それから三点は、生活環境の調整ということでございます。その対象者が、医療がうまくいって治る、治った場合にやはり最終的にはまた通常どおり社会復帰しなけりゃいけないわけですけれども、その社会復帰の受け入れの問題について、家族あるいは関係機関と協議し、あるいは相談するなどして、そういった場をきちっとつくっていく、そういう仕事を担当するというふうに考えております。

 したがいまして、今度は資格等でございますけれども、こういったことができるためには、やはりこのような対象者の方々に対する医療についての専門的な知識、あるいはとりわけ経験といったものがなければ、これは適切な観察・指導あるいはコーディネートができませんので、そういう精神保健に関する、あるいは福祉に関する専門的な知識経験を持っている人が絶対に必要であります。

 現在想定しておりますのは、これは法律によって資格を与えています精神保健福祉士という資格者がございますけれども、例えばそういった方々を中心に置いて、そのような知識経験を持っている方の中から精神保健観察官というものになっていただくということを考えております。

 ところで、人数でございますけれども、ここ数年の統計から推測いたしますと、本制度の対象者となる人数は年間三百数十人ないし四百人くらいに上るのではないかというふうに考えております。それらの数の者を数年間継続的に観察・指導等行うということになりますと、やはりそれに必要な人員というものが必要になりますし、これは全国の保護観察所に精神保健観察官というものを置かなければ実効は期しがたいということになりますので、そのような必要な人員といいますか、職員の確保にできる限り努めてまいりたい、このように考えております。

 以上でございます。

○漆原委員 保護司さんの話が先ほど佐藤委員から出ましたが、私も何人かの方から要請を受けておりまして、保護司さんは、この観察官の作業、仕事は違うんだということを、要請を受けております。私も、大丈夫だよ、今回はあなた方が使われることはありませんよというふうに申し上げているんですが、ただ、事実上、山奥にちょっと行ってよというような話になるんじゃないかという御心配もしておられます。

 いずれにしても、精神保健観察官という、この人数の確保と充実を図っていただかないと、心配、懸念が実現するわけでございます。しっかりとこの辺図っていただきたいなと思っておるところでございます。


○平岡委員 

 時間がないので、もう一つ通告している問題について入りたいと思います。

 先ほどお二人の同僚議員の方から、触法精神障害者に対する処遇の問題についてのお話がございました。私も、この問題について質問しなければならないのですけれども、実は私、今の政府の案、まだ確定はしていないのでしょうけれども、進められている案に対して大変危惧を持っているわけであります。

 どういう危惧かというと、精神障害で苦しんでいる人たちに対して、さしたる根拠もなく、あなたは重大な犯罪行為をまたするかもしれない人ですよというレッテルを張って、そして、この人たちを社会から隔離していく。まるで、かつてハンセン病の問題で社会隔離をした、この人たちが、結果的には、人にうつる可能性が少ないということが言われておったにもかかわらず、そういうおそれはないということがわかったにもかかわらず、そのまま続けられた、そんなような社会的な状況を起こしてしまうのではないかということを非常に危惧しているのです。

 与党三党で去年の十一月に案が示されたときには、このような重大な犯罪行為に当たる行為を再び行うおそれがあるというようなことを判断基準にするようなくだりは全くなかったのですね。それが、今示されつつある政府案ではそういう文言が使われている。これは、与党三党の検討の後、一体何が起こったのですか、大臣。

○横内副大臣 私から御答弁をさせていただきます。

 御指摘の与党三党のプロジェクトチームの報告書では、重大な犯罪に当たる行為をした精神障害者の処遇につきまして、「より確実な治療効果・病状の判断の下で入退院や通院の要否が決定されるべきである」ということを基本的な考えとして述べているわけでございまして、法務省が現在検討している法律の案もこれと異なるものではないのでございます。

 与党三党のプロジェクトチームの報告書というのは基本的な考え方を述べているわけでありまして、具体的な要件なんかにつきましては法案検討段階での検討に譲られているわけでございますので、決して、その考え方として、その二つの考え方が食い違ったとか、そういうことではないということを御理解いただきたいと思います。

 そこで、法案の検討の過程での我々の考え方としましては、こういった触法精神障害者に対しましては、まずその治療を確保することが一番大事であるということでありますけれども、その処遇については、人の自由の制約を伴うものですから、医療を行うことが必要であるという理由だけで国がその者に対して強制的な医療を行うということには問題があろう、そういう観点から、対象者の自由に対する制約や干渉が許される範囲を具体的に限定するために、継続的な医療を行わなければ再びそういった重大な犯罪に当たる行為を行うおそれがある、そういう要件を加えるのが適切だと考えたものでございます。

 こういう考え方は、現在の措置入院の制度も、自傷他害のおそれがあると、やはりおそれがあるということを要件にしておりますから、措置入院制度も同じような考え方でありますし、また、諸外国のこういう類似の制度においても、同様のそういった再犯のおそれというようなものを要件にしているということでございます。

○平岡委員 現在、政府が検討している案というのは、昭和四十九年の改正刑法草案、あるいは昭和五十五年に法務省刑事局が検討しておった保安処分制度の骨子、どっちかというとこの保安処分制度の骨子なんでしょうけれども、これに非常に類似した制度になっておりまして、これらは当時、国民的な批判を受けまして実現されることはなかったわけです。そうした案と比べて、この案というのは、また同じようなことを政府がやろうとしているのじゃないか、こういう危惧を多くの人が持っているということを指摘したいと思います。

 時間がないので、ちょっとこれに関連して、次の質問に移りたいと思います。

 今副大臣も言われましたけれども、精神障害のために再び対象行為、対象行為というのは重大な犯罪行為に当たる行為ですけれども、再び対象行為を行うおそれがあるということについて、裁判官あるいは精神科医が判断することになっているのですけれども、裁判官というのは、精神障害のために再び対象行為を行うおそれがあるということについて判断できるのですか。そういう能力があるのですか。特に、先ほどもお話がありました精神保健福祉法の中で、措置入院の中に自傷他害のおそれという言葉があって、それとはまた違った意味で、そうした犯罪行為、重大な犯罪行為を行うおそれがある、これを裁判官が判断できるのですか。これは、最高裁、来ていただいていると思いますから。

○大野最高裁判所長官代理者 お答えいたします。

 仮に、裁判官が委員御指摘のような判断をする立場に立って、そのような法律ができるということになりますれば、裁判所といたしましては、その適正な運用、判断が行われるように努めてまいりたいというふうに考えております。

 なお、この判断をするためには、必要な資料が裁判所に提出され、さらに、精神科医等の御協力が得られることが必要であるというふうに考えておりますので、その点についての御配慮をお願いしたいというふうに考えております。

○平岡委員 今の質問に関連して、いずれ法案審議が始まりますから、最高裁の方で、裁判官が再犯のおそれを判断するためにどんなものが必要か、これを一応整理して、ぜひ報告してほしいと思いますから、用意しておいてください。

 それから次に、厚生労働省に対してですけれども、精神科医が再犯のおそれを判断するということになるわけですけれども、精神科医は何を根拠に判断できるのですか。そのおそれはどの程度の期間にわたって判断することになるのですか。これについてお願いします。

○高原政府参考人 新たな制度におきましては、裁判所は対象者に対しまして、精神障害者であるか否か、及び、継続的な医療を行わなければ心神喪失等の状態の原因となった精神障害のために再び対象行為を行うおそれの有無につきまして、医師に鑑定を命じるということになっております。

 現代の精神医学、特に司法精神医学と呼ばれる領域は近年特に進歩が著しいところでございまして、その者の精神障害の類型、過去の病歴、現在及び対象行為を行った当時の病状や治療状況、病状及び治療状況から予測される将来の症状、対象行為の内容、過去の他害行為の有無及び内容等を考慮いたしまして、慎重に鑑定を行うことによりまして、継続的な医療を行わなければ再び対象行為を行うおそれの有無を予測する、そういうことは可能であるというふうに国際的にも認められております。

 また、おそれについて予測はどの程度できるのかという、期間もしくは確率というふうなことについてのお尋ねであるというふうに理解いたしますと、一般に、現代の司法精神医学におきましては、数カ月、例えば六カ月程度の精神障害者の病状の変化や問題行動に及ぶ可能性を予測することは一般的に可能であると考えられております。

 そのような予測の当否を的中率というふうな形で数値化するということはなかなか難しゅうございますが、相当確実だというふうな形で国際的な論文に出ておる、ないしは国際的な専門家から我々が聴取したところでございます。

○平岡委員 さまざまな危惧を私申し上げましたけれども、大臣、最後に、この議論を聞いて、触法精神障害者に対する処遇の問題について、どういう気持ちでこの法案を作成されるか、その気持ちをちょっとここで御披露ください。

○森山国務大臣 特に最近起こりましたこの関係の事案が大変深刻な、残酷なものであったということが非常に大きな印象として今も私の頭から離れません。それをきっかけにして非常に社会的にも関心が出てまいりまして、このまま放置することはできないというふうに思いまして、専門家にいろいろと勉強してもらった結果でございます。

 精神障害をお持ちの方々にとっては、まず治療をしていただいて、そして二度とそのようなことが起こらないようにしなければいけないというのがまず第一でございますし、そして、そういう方が十分に治療を受けて、安定した精神状態になり、社会の一員として普通に暮らしていただけるという状況を持つということが社会全体にとっても大変大切なことだというふうに思いますので、その両方の目的を十分に果たすような法案をぜひつくっていただきたいというふうに考えているところでございます。

○平岡委員 私が申し上げた危惧を十分踏まえて検討していただきたいと思います。

 以上で終わります。


154-衆-予算委員会第三分…-1号 2002年03月01日 (抜粋)

○田中(和)分科員 副大臣の御答弁、ありがとうございました。

 今はとにかく、残念ですけれども、非行少年といいますか、犯罪を犯す少年の幅が低年齢化によって非常に広くなってきたんですね。ですから、小学校、中学校、高校で相当、実はサポート役も違う役目を果たしていかなきゃいけない。それだけに、今お話あったように、専門家の養成をして保護司として活用する、これは非常にいいことだと思うのです。

 また、学校の先生も、学校によると思いますけれども、非常に混乱が起きて手がつかなくなる、また、それを予防するための日々の努力というものも専門的な知識が必要でありますからなかなか難しい。かといって、最初から警察にお願いするということもはっきり言ってでき得ないことでございまして、やはりこういうことを保護司の制度でうまく機能させていけば、本当にすばらしい効果をもっともっと上げることができるのではないか、このように私は思っておりますので、よろしくお願いしたいと思っております。

 さて、もう一点でありますけれども、今国会での制定作業が進行しております、いわゆる触法精神障害者処遇法に伴う保護観察上の体制の整備についてお伺いをしておきたいと思います。

 この制度については、退院後の医療の確保が重要と思われますが、対象となる精神障害者の通院の確保を保護観察所が新たな業務として行うことになりますので、保護観察所側が業務を担当するに十分な体制を整備することが不可欠であります。実際に現場を担当するのは、精神保健福祉士などの専門知識を持った専門家を精神保健観察官として新たに採用し、これに当たるわけでございますけれども、精神保健観察の業務自体も、精神障害者に対して通院や服薬などを促すなど、相当踏み込んだ内容になると思われます。

 本当に優秀な精神保健観察官は十分に確保できるのかどうか、対象者は何人ぐらいで、精神保健観察官は全国で何人ぐらいの採用を見込んでいるのか。当然、地区担当官が抱える保護司は先ほど言ったように平均で八十人から百人、こういうことでございますが、今でも手いっぱいの保護観察所の人員で、さらに業務が増加することを考えれば、今までの保護観察所の職員の業務にも重大な変化が起こる可能性がありますが、各方面より指摘されておりますように、これまでの更生保護行政の質を低下させないで対応できるのか、私自身も大変心配しております。新しい役割を受け持つ保護観察所の体制の整備と精神保健観察官の採用について、大臣のお考えをお伺いさせていただきたいと思います。

○森山国務大臣 御指摘の触法精神障害者に対する新たな処遇制度につきましては、保護観察所が、地域社会において継続的な治療を確保するために、病院はもとより、地域社会で精神保健に関する援助業務を担っている保健所などとも連携しながら、対象者に必要な指導等を行う役割を担うということが予定されております。

 この制度の対象者は、心神喪失等の状態で重大な犯罪に当たる行為を行った人ということでございますので、そんなに膨大な数が出てくるということは予定されておりません。退院後のアフターケアを実効あるものとするためには、これらの人の生活状況を見守りまして、その相談に応じ、通院や服薬を行うように働きかけていくという、毎日の日常生活のきめ細かな指導ということが必要だと思います。

 しかし、専門的な知識が必要でありますので、御指摘のとおり、このような処遇は、精神保健や福祉に関する専門的知識及び経験を有する職員がこれに当たる必要があるというふうに考えておりまして、おっしゃいましたような精神保健福祉士の有資格者など、この制度で必要とされる専門的知識及び経験を有する者を精神保健観察官として確保したいというふうに考えております。

○田中(和)分科員 大臣の御答弁ありましたけれども、実は、現場では相当心配をしているんですよ。というのは、毎日の業務が大変膨大でございまして、当然、各保護観察所の職員の人たちの心配、一方では保護観察所の状況をよく知っている保護司の皆さんまで、大丈夫なのかな、あの上に仕事がふえて本当に大丈夫だろうか、素人の自分たちにも仕事が回ってくるんじゃないか、こういう心配まで実はしておられまして、法務省としても早目に、もちろんこれからの法律ですけれども、法律をこれから審議するわけでありますけれども、やはり法の趣旨とか予想される実情については早目早目に説明をしていただいて、挙げて御理解と御協力がいただけるようにひとつ御尽力をいただきたいなと思っております。

 そこで、総務省の方と財務省の方と二省に、ただいまのやりとりをお聞きになっておられたと思いますのでお伺いをいたします。

 保護観察所の職員、さらに保護司や新しい制度の精神保健観察官の増員は今や不可欠でありますけれども、総務省の所管であります職員の増員について、ぜひどのようなお考えか御答弁をいただきたいと思います。

 これは、私は、実は保護局を存続するかどうかということとあわせて、当時から、保護観察所等の職員については増加をさせていかなければならない、このように申し上げてまいりましたし、相当この面については御配慮もいただいているんですけれども、いま一歩踏み込みが足りないような気がいたしますので、これは先ほどから言っておりますように、社会の大きな変化に対応するという新しい事態でありますから、ぜひひとつ増員について前向きな御答弁をいただきたいと思います。

 もう一点、保護司の処遇改善や保護観察制度に関する予算のアップについては財務省の所管でありますけれども、私が今一端を申し述べましたけれども、私の申し上げた点だけでも、実は予算の措置なくして一歩も前に進めない状況でございますが、この点についても財務省としてのお考えをお聞きしておきたいと思います。

○松田政府参考人 お答え申し上げます。

 保護行政につきましては、凶悪少年犯罪が増加する中で、保護観察の対象となります少年が増加していること等を踏まえまして、これまでも、厳しい定員事情のもとではございますが、保護観察所の保護観察官の必要な増員を行ってきているところでございます。

 また、先ほども先生から御指摘ございましたように、現在、法務省におかれまして検討されております重大な触法行為をした精神障害者の処遇に関する法律案におきまして、精神保健観察官の配置が規定される予定であることもまた承知いたしているところでございます。

 今後とも、このような保護行政をめぐります情勢を十分踏まえまして、法務省とも十分協議しながら、また法務省におきます他の部門からの定員の再配置の御努力等もお願いしつつ、適切に対処していきたいと考えております。

○杉本政府参考人 先生の御質問に対して、財政当局の立場からお答えさせていただきます。

 御指摘のように、犯罪者の改善更生、青少年の保護、指導、こういったものは非常に重要なことでございまして、犯罪者の社会復帰、青少年の健全育成、こういうものを通じて、安全な社会を築くために重要な役割を果たしているということは、私どもも十分認識しているところでございます。

 十四年度予算におきましても、保護司活動の充実強化、更生保護施設の処遇機能の充実強化、こういったものに重点を置きながら所要の予算の計上をいたしまして、更生保護活動に係る経費の充実を図っておるところでございます。

 今後とも、厳しい財政事情の中ではございますが、法務省とも十分御相談をしながら適切な措置を講じてまいりたいと考えております。

○田中(和)分科員 今、総務省と財務省より前向きな御答弁をいただきました。大変私もありがたいと思っておりますけれども、現実には、職員の数がさっき言ったように減っているんです。大変踏み込んだ御尽力をいただきながらも、やはり現実には減っている。このことは、やはり法務省の方も、大臣、副大臣おいででございますが、もっと積極的に、今いい答弁がありましたので、ひとつ要望していただくと。

 また、予算についても、とにかく明るい日本をつくるためにこれはもう仕方がないんでございまして、ぜひひとつ法務省の方と財務省とよく協議をしていただいて、ひとつ明るい日本をつくるために重ねてお力を賜りますようにお願いを申し上げ、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

 ありがとうございました。